キッチン 吉本ばなな

キッチン (角川文庫)

キッチン (角川文庫)

そんな今夜は吉本ばななでいきましょう。
衝撃、衝撃でした。本当に恥ずかしいことに、私はつい最近まで彼女の作品を教科書でしか呼んだ事がありませんでした。授業で習ったときも漠然といいなあと思っていたのですがそれから積極的に読もうとはしていなかったのです。しまった。人生損した。でも、彼女の作品はちゃんと恋というものを体験してから読むべきなのかもしれません。思えばあの時はまだサルのようなものでした私。
さて、台所とは食、つまりこの小説では色濃く食の描写がされているのです。まさに料理の使い方が絶品!玉子がゆから始まって家庭料理、豆腐料理、かつ丼まで様々な料理が出てきます。そしてその料理と食べる心境とのからみぐあいはまさに「美味なるもの」という感じ。料理って、ただ栄養を得るとか空腹を満たすためだけじゃなくて、もっと自分のしあわせのために、他のひとのしあわせのために美味しいものを追求しているもので、そのしあわせの瞬間にはきっとたくさんのドラマがあるものなのでしょう。つまり、キッチンとは食、食すなわち生きるということ。ラストの方で愛するひとのために美味しい料理を届けるシーンでは本当に感動しました。この作品が生み出されたのは私が生まれた年と同じなのですね。なにか運命的なものでもあるのでしょうか?そんなことさえ信じたくなる作品でした。