うたかた/サンクチュアリ

うたかた/サンクチュアリ (新潮文庫)

うたかた/サンクチュアリ (新潮文庫)

さて、大急ぎで探して読んだこの作品は、まさに私が今まで読んだ恋愛小説ベスト10に入るものでした。吉本ばななの恋愛観って夢のように現実感がないようにみえて、実はすっごく現実的で、読んだ瞬間心の奥のほう、恋をしていた頃の自分の感情が急にきゅーっと起こされたような不思議な気持ちになります。文章を引用させていただきます。
たとえるならそれは、海の底だ。
白い砂地の潮の流れにゆられて、すわったまま私は澄んだ水に透ける遥かな空の青に見とれている。そこでは何もかもが、悲しいくらい、等しい。
目を閉じて走っても、全く違うところを目指したつもりでも、気持ちはいつの間にかくりかえしそこへたどりつく。

なんだこの表現は!最初は海の底?なぜ?と思っていても、最後の文章を読んだ瞬間胸がつまる。これこそ恋だ、恋じゃないかと。ここまで深い恋を体験したことがないのがはがゆい。こんな恋が出来るまでは死んでたまるもんかと思います。吉本ばななはきっとそんな恋をしていたに違いありません。作品全体に流れるあふれるほどの愛を感じ取りました。
まだまだ遅れを取り戻すため更に吉本ばななを読みふけりたいと思います。