さくらん 安野モヨコ

さくらん (KCデラックス イブニング)

さくらん (KCデラックス イブニング)

遊女という言葉は、もう廃れたに等しいと思います。
「現実の世界」で使われないのならばその言葉はもはや「過去の言葉」になってしまうんじゃないでしょうか。
京都観光やらなにやらで形式となってしまった面影を見るだけ。
本を読んだり映画を観たりしてもやっぱりしっくりこない。
でも、安野モヨコのスゴイのは、「過去」なんて言葉を一網打尽にして、そっくりそのままあたかも今現実にそんな世界があるかのように見せかけてしまう。
なぜかというと、このマンガにでてくる女性たちはあまりにもリアルなんです。
考え方や価値観に違いがあるといったって、
恋愛への切なさや、ライバルへの嫉妬心や、信頼する人を亡くした悲しみなんかも、全部そのまんま今の女性たちなんです。
歴史マンガによくありがちな史実や時代背景を描きたいだけの、博物館のようなマンガ。
そんなものたちは読んだことがないのよとでもいうように、時代を超えていままさにその場で人が生きているような感覚。
しかしそれでいて遊女という設定がなくてはありえない、むしろそれでこそ生きる人物たち!
時代モノとかそんなジャンルの話は抜きにして、とにかく面白いです。