対岸の彼女 角田光代

対岸の彼女

対岸の彼女

人と付き合ってやっていくことの難しさを、たまに果てしなく感じることがあります。
特に集団、グループの中では。
みんなと全く同じに、なんとかうまくやらなくては、とか必死に思うことはなくてもまあできれば和を乱さないように気をつけなくてはいけないわけです。
自分の意見を主張するのもいいけれど、毎度主張してたら話は進まないわけです。
まあそんなんだからあまりグループっていうのは好きじゃないわけですが、結局社会では否応なしにそうならざるを得ないときがあります。
で、その集団の中に自分をうずめなくてはいけないとき、なんとかうまくやっていたり、別に苦しいというワケじゃなくても、息がつまるような苦しさを感じてしまうのです。
まだ私はマシな方だとは思いますが、女の子のグループとかってほんとすごいんですよね。
みんなそんな風にしたいワケじゃないのに、いつでも一緒、なにしても一緒。
結局理由はカンタンでひとりになるのがものすっごく怖いから。
確かに、ひとりになるのは怖いです。見栄をはらずに言います。本心からそう思います。
でも息苦しい中にただ身を沈めて(恐ろしいことに自分でも気がつかずにそうしているときがある)しか人と付き合えないなんて、それがこれから死ぬまで続くなんて、と考えてみると途方にくれてしまいます。
この本を読んだとき、あまりにもリアルな「人付き合い」の描写に思わず胸が苦しくなりました。そんな風に表現しないでくれ、あまりにも真実すぎる、と。
「大人」になって、子供を産んだり、働いたり、成長した社会人として生活していても高校生のころと全く変わっていない現実。。
主人公や読者を絶望に突き落として、ああ、結局自分は死ぬまで人付き合いをしなくてはいけないのかと思わせたいかのようです。
しかし、話が進むにつれて作者の本当に伝えたいメッセージが見えてきます。
絶望していては始まらない。
人と人が関わって生きていくのって本当はもっとすばらしいことなんだよ、大丈夫、きっと年を重ねるごとにもっと素敵な付き合いができるようになるから。
絶望の果てに涙がでるほどあたたかい声を聞いたとき、肩にのっかっていた荷物がふっとひとつ消えたように感じました。
きっとこの本を読んだあと、次の日からすーっとした気持ちで人と関わられるようになりますよ。