殺人者はそこにいる―逃げ切れない狂気、非情の13事件

殺人者はそこにいる―逃げ切れない狂気、非情の13事件 (新潮文庫)

殺人者はそこにいる―逃げ切れない狂気、非情の13事件 (新潮文庫)

人に殺される瞬間って、どんなことを思うのだろうか。
やっぱし実際にそうなってみないと決してわからないものなんだろうけど精一杯想像してみるとやっぱりひとつしか思いつきませんでした。
「恨む」
う〜ん、自分の性格の悪さがよくわかる・・・
まあ、よっぽど自分が相手に対して酷い事をしたとかそうゆう希望だとかでなくて
まったく何もしていないのに、または殺されるようなことなんかしていないのに、ある日突然これからの自分の人生を台無しにされたら?
私は恨んでも恨みきれないと思います。
そんな感じで殺人事件には、それだけどす黒い渦巻いたものがどろどろと圧し掛かっているものだと思います。
殺人者の恨み、被害者の恨み、遺族の恨み・・・
恨みが恨みを招きまた新たな恨みを生み出す。
こんな恐ろしいものが、自分の周りではないにしろ同じ地の上のどこかで起きてるなんてそれだけでも恐ろしいです。
そしてその中でも特に読んでいて不快感のあるものが集まっているこの一冊。
気分が落ち込んでいるときに読むことはオススメしません
ただ、ただこの本を恐ろしい物みたさの為に読むのか、
それとも何かを少しでも得ようとして読むのは自ら選択できると思います。
起きてしまった「非情」な殺人事件のウラにはどうしようもない虚しさや悲しさがありました。
結局人間はひとりで決して誰ともひとつになれなくて、
それだからこそ「殺していい」なんてことは絶対にありえない。
「自殺記録テープ」なるものを録音した中年男性の話がありました。
彼は自分の家族を道連れに、それも何も明かさず、ある日突然信頼していた家族を裏切り殺害。
無理心中させた上に、「これからお前らのところに行くよ。」と家族が行きたがっていた地や思い出の場所へ行き、家族の願いを果たしてやるつもりになるという恐ろしいほどの勘違い自殺劇を演じます。
テープでは、ひどく自己陶酔になっていて、家族が自分と同化しているとでも思っているような話しぶりです。
彼は無理心中することで死後の世界で永遠に家族とひとつにでもなれると思ったのでしょう
しかし、テープの最後に録音されていたのは、
「ひとり」の人間が命を絶ったあとの、耳を裂くような轟音でした。
ハッピーエンドには程遠いのです。

私がこれを読んで学んだことは人間というものの絶対の孤独と悲しさでした。
殺人事件を通して学ぶのも悲しすぎるけど、
人を殺すことほど無意味なものはないなあと思いました。