シガテラ 古谷実

シガテラ(6)<完> (ヤンマガKCスペシャル)

シガテラ(6)<完> (ヤンマガKCスペシャル)

一歩間違えてしまったらまだ読んでいない方が最終巻を読んだ後の感動を損なう恐れがありますので、慎重に言葉を選びたいと思います。
ひとりのいじめられっこの少年に次々と起こったのは、「幸福」と「不幸」でした。よく幸も不幸も起きる確立は紙一重である、と言いますが、彼には神から人へと与えられる試練のように幸福と不幸が順番に訪れていきます。ある時は幸福に感謝し、ある時は不幸に気付かずに日々をすごしていく彼。その姿は常に読者を不安にさせます。彼が気付かずに置いていかれたままのいくつかの「不幸」がいつかとんでもない事になるんじゃないか、結末では大きな不幸が彼の幸せを根こそぎ持っていってしまうんではないかというように。
しかし、結末を読んだ瞬間、読者は想定していた結果とのあまりの違いに驚愕するのです。いや、違うのか?これは不幸ではないと言えるのか?この答えはわかりません。作者が彼に最後に与えたあまりにも残酷で、悪のない結末には不幸とも幸福とも呼ばせない厳しさがあります。しかし、この作品にはこの結末しか有り得なかった。彼の人生にはこれしか有り得なかったのだ、と納得してしまいました。絶対に最終巻まで読むことをお勧めします。