DIVE! 森絵都

DIVE!!(1) 前宙返り3回半抱え型

DIVE!!(1) 前宙返り3回半抱え型

ハッキリ言います。この作品は、児童文学史に残る名作です。
いや、偉そうだなコレだと・・まあ気持ち的には,これぐらいの意気です。
初めてこの作品を読んだとき、あまりの感動に鳥肌が立ちました。
森絵都という作家にただただ感服してしまった。
この作品を境に児童文学への考えがガラリと変わりました。強制するワケじゃありませんが、私はこの本を読まないまま死ななくて本当に良かったと思います。
水泳界でも目立たない、「飛び込み」競技。競泳のように手に汗握る0.001秒の戦いや、シンクロのような目に見えてわかる美しい芸術性があるわけではない。しかし、選手が踏み切り板から飛び出し、高さ60メートルから空を飛ぶ時間、わずか1.4秒。まさに一瞬の芸術でしょう。その一瞬のために、恐怖に震える膝を叩き、他の雑念を捨て、逃げたいと思っても「そこ」しか行くところがない彼らは、足を踏み出して舞台へと登っていきます。
飛び込みというスポーツの魅力を最大限に引き出し、またその選手らの苦悩や挫折、友情や家族愛などを見事に描き、ただのスポ根ものとは言い切れないほどの興奮と感動を与えてくれる作品です。
私的に、この作品は名セリフが続出だと思います。何度読んでも、その箇所では興奮が全身を駆け巡り、震えが走ります。
あんまり書くともったいないので、一部紹介してみます。
「あれだけ夢見てきたのに、口には出さなくても心の中にはずっとあったのに、そのためにあんなにがんばってきたのに……。なのに、オリンピックへ行けることになっても、あんまり嬉しくないんです。なんだか他人事みたいで、ワクワクしないんです」ここが、と要一はふいに大声を張りあげ、自分の胸ぐらを握りしめた。「熱くならないんです」(本文から)