眠れるラプンツェル 山本文緒

眠れるラプンツェル (幻冬舎文庫)
↑画像ナシ。なんで〜(泣
中学3年生ぐらいの時ラプンツェルの童話を読んで「なんかすっげ怖い話!」と思ったのを覚えています。
美しいラプンツェルを塔に閉じ込め、また彼女を助け出そうとする王子を殺そうとしてしまう恐ろしい魔女のおばあさんでした。
確かに怖い。独占欲とか、なんだかそういうものの塊のような。
でも、この「山本文緒ラプンツェルにはそういうあからさまな魔女はいない。
昼ドラにでてくるようなねちっこい悪女とか、ありがちな適役とかは出てこないのです
強いて言うならば主婦の主人公を少しずつ蝕んでいく「日常」でした。
主婦の生活が彼女を塔に閉じ込め、他との接触を遮断し、ただ空を眺めて何かを待つような眠れるラプンツェルにしてしまった。
しかし、この作品での王子様は、ちょっとびっくりするかもしれません。
嫌悪感を抱いてしまう人もいるかもしれない。
王子様は、隣人の息子の12歳の少年でした。
ラプンツェルは28歳の専業主婦。王子は12歳の少年。
決してショタコンとかの話じゃありません。
読んでいて息が詰まってしまうような苦しい恋愛があります。
「日常」の崩壊と、崩れる魔女のおばあさんの独占。
なにもかもを失ったと思ったラプンツェルにもひとつだけ残されたものがありました。
それは男を誘う美しい声でもなく、綺麗な長い髪でもなく、
塔の扉の鍵でした。
最後の最後どうなったかまでは書かれていませんが、目覚めたラプンツェルはきっと少なくとも眠っていたころよりは幸せになっていてくれていると思います。
主婦の生活のつらさとか、愛に年齢差は関係ないだとかそんなことを語っているのではありません。
「人間」って深い喪失や悲しみを体験して、それでも生きていくものなんだ、
むしろそれがあるから「人間」なんだ!!!!
喪失は悲しいけど、それを恐れて眠っているようにはなりたくはないです。